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冷透






























冷蔵庫の炭酸水を飲みながら、太陽をみちづれにして水時計の中身が落ちていくのを見つめていた。むらさき色の部屋が暗くなるまで、シンセサイザーの上でダンスを踊っても、凝り固まった意識が頭蓋骨に当たる反響音で目が覚めてしまう。むきだしの矩形波が食い込んで、指に歯形を残していくが、血は出ない。おれはいつのまにかノーマライズされてしまった。おまえはいつのまにか消えてしまった。砂浜へ続く夜道を歩く。おまえの好きな歌を息切れするまでうたって、溺れるという感覚が遠のいてしまわないようにする。海を、呼吸を忘れるためのツールとしてとらえる。繋がらない番号にダイアルする。耳に当たる波のうねりと、水中で回転する魚の発光が、テクノめいた音楽になって頭の中で点滅する。水は透き通っている。すべてをさらけ出すふりをして、すべてを覆い隠している。おれは煙草に火をつけて、夜明けを待っていた。水平線にさわってみたい。おまえの肌みたいに、つめたく滑って、体温を奪ってくれるのだろうか。氷のように眠るおまえが好きだった。また、夢の話をきかせてくれ。

「冷蔵庫で眠るようになってから、皮膚が透けはじめました。色つきのソーダが、わたしを水時計にして、太陽の歯車をまわします。むらさき色に渦巻いて、鍵盤の上で踊るあなたの指に噛み付いたときの、電子音の味が好きでした。ディレイというエフェクターが好きでした。イコライザーをやりたい放題いじって、あなたによく叱られました。夜になると、あなたは携帯電話を飲み込んだわたしを連れて外を歩くのです。砂浜までの一本道を、一緒に歌をうたいながら、歩くのです。海へ潜って、あなたが電話をかけるのを待って、わたしの毛細血管や筋肉組織の中を、イルミネーションにまみれて、魚が泳いでいるのを眺めながら、呼吸を忘れないためのおまじないをします。水中に沈むことと、凍りつくことの違いを教えてください。あなたはわたし越しに夜明けを睨んだまま、かえってきません。わたしの向こう側から、かえってきません。あなたの吐く煙を、吸い込んでもいいですか。今朝は、冷凍庫で眠ります。あなたがわたしを起こす頃には、つめたい結晶になっているでしょう。夢の話を、きかせてあげます。」








































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